ノーリフティングケアで介護職の腰痛を予防

腰痛は介護職を悩ます問題の一つです。移乗介助をする際に利用者の身体を持ち上げたり、オムツ交換で体位を変えたり、入浴介助や食事介助で中腰姿勢のまま利用者の体重を受け止めたりしなければならないので、腰に負担がかかることが腰痛を引き起こす大きな原因となっています。そこで、介護職の身体的な負担を軽減するために、欧米では福祉機器を駆使して介助を行うノーリフティングケアが積極的に導入されており、日本の介護現場でも注目され始めています。

ノーリフティングケアは、利用者を直接抱え上げたり、引きずったりすることをしないで、移乗用リフトのような器具を使い、身体を動かすのが大きな特徴です。介護職の腰痛予防や業務の軽減につながるのはもちろんのこと、不慮の事故を未然に防ぐことができるため、介護の安全性が高まります。また、介助される利用者側は、移乗用リフトを使うことで身体に余計な力が入らなくなり、自然な動きが促されるので、自立意識が高まる効果も期待できます。

ただしその一方で、ノーリフティングケアの導入には高額な費用が必要となるほか、日本では機械を使った介助に対する抵抗感や人力への拘りを捨てきれない風潮があるため、浸透しづらいというデメリットもあります。しかし、介護職員の健康を守り、職場への定着を促進するためにも、ノーリフティングケアの活用は不可欠です。そのため、ノーリフティングケアへの理解を深めるとともに、各自治体が本格的な導入に向けて支援するような流れを作ることが課題になっています。